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ぱたぱた、とスリッパの音がした。
耳をたてて音の主を探す。階段を下りていったのがわかった。
布団から顔をだして欠伸をする。もう少し寝ていたい。しかしもう昼前だ。そろそろ起きなければ。
体を起こしうんと伸びをする。寒い、布団の中が恋しい。
「材料が足りない?」
部屋を出ると、階段下からの声が聞こえた。階段を下りると声はより大きくなって耳に届く。
「そうナんですヨ・・・」
「それじゃ、オイラが買ってくるッス」
どん、と振り向いたクラックとぶつかった。
これは扉の前で立っていた俺が悪い。
「何かあったのか」
「遅かっタですね。実は明日のケーキの材料が足りナくて」
昨晩、フウカが料理の手伝いをしていたのはわかってる。フウカが料理を苦手なことも知ってる。
材料が足りなくなったのはしょうがないことだ。
「今から買いに行くんスよ」
「一人で平気ですか?」
メモには文字の羅列が並んでいる。よくわからない材料まである。何に使うんだろうか。
フウカは淡雪と明沙の子育てに勤しみ、織色もケーキの手伝いをしている。リフがケーキを作る。となれば手が空いているのはクラックと、俺だ。
「・・・荷物持ちでいいなら、手伝う」
そう言うとリフは俺の頭からつま先を見る。
「早く着替エて下さいね」
追い出されるように部屋に戻りすぐに着替え、玄関で待っていたクラックの後ろに続く。
クラックは少し急ぎ足で歩く。俺も揃える。
「リフ、気合い入ってたな」
「そりゃそうッスよ。注文がきたときからやる気満々でしたッスから」
そう言って俺に笑いかける。クラックはリフが好きだ。それは誰しもが知ってること、だと思う。
どうやらリフが先に好きになったらしいが、真相は定かじゃない。リフは本当のことは言わなかった。
確かに、リフが恋するなんて、思えない。なんて言ったら怒られるだろう。
そして、フウカが俺を好きになるなんて、とも言われるかもしれない。
スーパーに着くと、クラックは材料がおいてある棚に一直線。他の場所には目もくれない。
リフに怒られると怖いからな。
「クラック」
「はい?」
「頑張れよ」
はぁ、と頼りない返事。それもそうだ。男は腰が低いから、しょうがないことなんだ。
嫁には弱い、か。そんなことをぼんやり考えている間にクラックを見失いそうになったことは秘密だ。
ケーキは無事完成した。翌日、注文してきた女性も、喜んで受けとってくれた。
これが二人の喜びなんだろうな、俺にはわからないが。
「皆サン、お疲レ様でした」
「ご協力感謝ッス」
二人は笑顔で頭を下げた。そして冷蔵庫から箱を取り出す。
箱はシンプルなものだった。真っ白で飾り付けもない。
その中身はすぐにわかった。隣にいるフウカが首を傾げる。
「今日はクリスマスですカら」
箱を開けると、中は秋色のケーキだった。
皆の好物が少しずつ入ってる、特別なケーキ。
「すごいわ・・・」
「け、き!」
ケーキな。というとフウカはもう一度けーき、と言い直した。可愛い。
今日はクリスマス。雪は降ってないしサンタもこないけど。
淡雪と明沙にとって始めてのクリスマスだ。二人は今、ベッドで寝ているが。
「今日はご馳走様ッスから!」
キリストがどうとか、そんなのはどうでもいい。
ただ家族が楽しめて、喜べて、笑顔が見られるなら、何でもいいんだ。
「メリークリスマス!」
シャンパンとシャンメリーでお祝い。
家族の笑顔が、最高のプレゼントで。
フウカの笑顔が俺にとって一番のプレゼントで。
俺はフウカに、俺をプレゼントする。
それでいいか?なんて心の中で伝えたら、笑顔を見せてくれた。
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