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 崖から落ちた。ただそれだけだ。いや、確かにそれだけなのだが、落ちた本人にしてみればそれどころではない。
 空はまだ青い。しかし夕暮れが近づいてきていることに替わりはなかった。
「危な・・・」
 真っ白い服は土色。更にボロボロになってしまった。
 あーあ、せっかく新しいリボンだったのに。
 崖から落ちた本人、ページュはため息をついた。
 買い物をしてちょっと寄り道をした。ただそれだけなのに。
 ページュは空―崖の上を眺めた。そう高くはない。
「いたっ・・・あ、血・・・」
 立ち上がろうとして足を捻ったことに気がついた。幸い、骨に異常はなさそうだ。
 膝を擦りむいたせいでワンピースに血が滲んでいる。しょうがない。巻いていたマフラーを外して膝に巻いた。
 どうせ赤いんだから、汚れても目立たないだろうし。
 それより―ページュは体を震わせた。
 大声を出せば誰かくるかもしれない。しかし落ちたとき、周りに誰もいなかった。今だって人の気配を感じない。
 飛べばどうにかなるかもしれないが、今、ページュにそんな体力はなかった。
「ああもう、運が悪いな」
 舌打ちして膝を抱える。ずきずき痛む膝をさするがあまり意味はない。
 そうしているうちにどんどん日が沈んでいく。冷たい風がぴゅうと頬を横切った。
 今日が晴れてるだけよかったかな。雨でも降ってたら凍え死んでいたかもしれない。
 いや、雨だったらここにきていなかっただろう。やはり僕は運が悪かったんだ。
 もしこのまま助けがこなかったらどうしよう。ページュは少し先に流れる川を見てぼんやり考えた。
 死ぬ、なんてことはないだろうが・・・。死ぬんだったら食べ過ぎとか、そういう単純なことで死にたいし。
「そう簡単に死んでられないけど」
 とにかく、独り言でも言ってないとやってられなかった。
 ただでさえ苛々しているというのに。
 数分後、だろうか。―彼にとってはもう数時間以上経っている気がした。
「・・・雨、か」
 やっぱり運が悪いんだ。こんなときに雨が降るなんて。
 目の前がぽたぽたと湿っていく。ほんとに凍死したら、化けて出てやろう。
 そんな願いも虚しく、ページュの頭上には雨は降ってこなかった。
 雲が僕を避けて雨を降らせてるのか。なんてファンシーなこと考えながら上を向くと、青い空がぽっかり浮かんでいた。
 確かにそこには青空が広がって―なんてそんなことはなく。崖の上からひょっこりと誰かが顔を覗かせた。
「遅い」
「何ともないみたいだな」
 ほっと安心したのは茶髪の男性。ページュは痛む足を無理矢理立たせ「早く下りてこいクーナ!」
 と、叫んだ。
 呼ばれた本人はあまり焦った様子も見せずに、崖をひょいと下りた。
「怪我は?」
「大有りだよ。もう少し遅かったら死んでた!」
 そう言ってぐぅとお腹を鳴らせた。本人の意思ではないが、体は正直なのだ。
 ページュを抱え、崖を飛び上がる。黄土色の固そうな羽はかっこいい、と呼べるものではなかった。
「歩けるか?」
「無理、傘は僕が持つから、おぶってね」
 ページュの頭上には相変わらず、狭く青い空があった。
「しかし、生きててよかった」
「せっかく化けてでてやろうと思ったのに」
 ま、生きるのも悪くはない。ページュはそう思いながら、次死ねる死因は食べ過ぎだな。と考えていた。




灯灰のが見つけられそうだけどね
灯灰とページュってあんま関係ないんだよなぁと今更
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